高石市医師会創立50周年記念事業の一環として、 H28年6月4日(土)高石アプラホールにて「青少年の未来におくる講演会」を実施した。講演には、近隣の高校生を含め多数の聴衆が来場された。
講演に先立って、岩田医師会長は「小説『白い巨塔』に出てくる医師会長は、岩田といい、わたしと同姓で、非常に悪辣な人として描かれています。そのように医師会は、ともすると悪いイメージを持たれていますが、実際には医師会の活動は、予防接種や検診、休日診療など、地域の身近な医療を支える地味なものです。また、医師会と言えば、開業医だけの集まりと思われがちですが、演者の澤 芳樹教授は大阪大学心臓血管外科の教授であると同時に、大阪府医師会の副会長もつとめておられます。」と紹介した。
澤 芳樹教授の講演「医療が創る夢のきざはし」は、適塾の緒方洪庵の、「医師の本分とは人のために生きることであり、金や名誉を求めず、ただ人を救う事を願うものである」という言葉から始まった。
脳死心臓移植が承認されてからでも、日本人の死生観にも関連して、脳死移植がなかなか進まない現実がある。成人の心移植も多くはないが、小児の脳死心臓移植にいたっては、まだ、わずか3例しか実施されていないという厳しい現実がある。
しかも、外科に来る患者はすでに内科的には手の施しようがない人であり、そういう人を最後まで見捨てないで、なんとか治療したいという思いが、心筋シートiPS細胞を使った治療など様々な研究をする原動力になってきたという。拍動する細胞シートが手術で実際に人の心臓内に移植される様子も動画で提示された。
日本の再生医療技術の先進性を世界に発信するため、先日の伊勢志摩サミットでは、細胞シートを出展し、現在研究中のiPS細胞由来の心筋細胞シートも紹介したという。
若者へのメッセージとして、「自分の天職を見つけること、人との出会いを大切にすること、夢中になって仕事をすること」を勧めていた。手術のリスクをどう考えるかという質問には、第三者も交え客観的に、患者のためを第一にリスクとベネフィットを検討することが大切であると答えた。高齢化社会と医療について質問した生徒にたいして、「医療現場だけでは解決のつかない問題がたくさんある。君が将来政治家になって、この問題を解決してほしい」と澤教授が要望する場面もあった。
続く平将生助教の講演は、「日本一の心臓血管外科医局に所属する若手医師の1週間」を紹介したものである。
朝7時半から始まるカンファレンス、時には明け方まで続く手術、紹介患者の受け入れのための出張、外来診療と、帰宅するどころか、睡眠をとる暇もないスケジュールである。それでも、患者が笑顔で帰宅することが、医師の何よりの喜びであり、そのために、「どんなに忙しくてもやらなくても良い仕事はない」と言いきっている。さらに、社会との連携が大切だと、学校に出むいて、「命の授業」もしているという。献身的な努力には、ただ、頭が下がる思いであった。
新しい人工心臓を使って元気に生活できている患者の事を喜ぶ一方、厚生労働省の認可が間に合わず、その人工心臓が使えないままに亡くなってしまった患者に対する痛恨の思いがあるという。これからも、現場から離れず、現場の問題点をしかるべき窓口に送れる人でありたいと将来の夢を語った。
どちらの講演も、中高生だけでなく、中高年にも非常に興味深い内容で、聴衆からは、「感動した」と、大変好評であった。
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