8月24日(土)高石アプラホールと共催で映画「折り梅」上映会が実施されました。医師会広報活動の一環として毎年行っている映画上映会も、今回で5回目をむかえています。
24日は、前日から降り始めた雨が度々激しくなるというあいにくの天候でしたが、3回の上映で合計1140名を超える来場者があり、たくさんの方に映画を見ていただくことができて喜んでいます。高齢化が進む中、認知症を取り上げた映画ということで市民の関心が高かったということでしょう。
映画「折り梅」は、一人暮らしをしていた姑の政子を引き取ったところ、認知症を発症し理不尽な行動を繰り返すようになるところから始まります。嫁の巴が準備した昼食のお弁当を投げ捨てたり、お金を取ったと言って巴を責めたり、突然「出ていけ」と暴力をふるったり、政子はいろいろな事件を引き起こします。巴が隣人の好奇の視線、子供たちの反発、夫の無関心な態度に傷つき、何度もくじけそうになりながら、それでも施設ではなく、家族で共に過ごす方法を模索し続けるのです。そのなかで、巴も政子も家族一人一人みんなが少しずつ変わっていく姿が描かれています。
映画の中に登場するグループホームで「認知症の方って、自分が自分でなくなっていくことがとっても不安なのです。でも、ここに来たら、ありのままの自分でいいのだとわかって、とても安心して落ち着かれるんです。」という言葉は、心に響くものでした。
政子は勧められて、新たに絵を習って描きはじめます。次第に腕を上げて、一般の人に交じって県の美術展に応募し、入選までするのです。これは、実話をもとにしたストーリーで、決して作った話ではありません。認知症が進んでも何もできなくなるわけではないのです。映画には出てきませんでしたが、原作の「忘れても幸せ」には、個展を開いて政子が書いた作品を見てもらうエピソードも紹介されています。
映画の最後は、認知症が進んで少女の頃に戻ってしまった政子と巴が、静かにお茶を飲むシーンで終わっています。家族の絆、終末期をどう過ごし、どう看取るか、考えさせられる映画でした。
映画上映のあとに、認知症の理解を深めるために引き続き講演会「介護者から見た認知症」を久堀保医師にお願いしました。
「年齢とともに増えるもの忘れ、昨夜の食事のメニューを忘れているのは普通の物忘れですが、晩御飯を食べたかどうか忘れているのは、ちょっと危ないですよ。」と、ユーモアあふれるコメントで講演は始まりました。
「長い間会っていない友人の名前が思い出せないのも、漢字が読めるのに、書くとあやふやになるのも、普通の物忘れですが、一緒に暮らしている家族の名前が出てこなくなったら要注意です。症状は、一緒に暮らしている家人といるときにひどくなるので、たまに会う遠くの親戚とか、病院の医師の前ではうまく取り繕ってしまい、認知症だと家族以外にはわかってもらいにくいのも特徴の一つです。」とのこと。
「勘違いされていることが多いのですが、認知症は病気の名前ではありません。『咳』『鼻水』と同じような症状を表す言葉で、咳が出る病気に、結核や喘息などいろいろな病気があるように、認知症を起こす病気もアルツハイマー型、脳血管型、レビー小体型などいろいろあるのです。硬膜下血腫のように治療してよくなる認知症もあるので、必ず、一度は医療機関を受診して、認知症の原因は何かを、調べてもらってください。」と久堀先生は強調されていました。
また、「アルツハイマー型の認知症では薬をのんでも症状の改善できません。でも、薬を続けることで進行を送らせることはできます。薬を飲まない人に比べると1年以上長く家族と共に過ごせるということです。治療が重要なのです。」ということ。
そして、「治療とともに、大切なのが家族が認知症の人にどういうふうに対応していくかということです。子供にするように頭ごなしにガミガミ怒るのは逆効果。認知症なので怒られた内容は覚えていないのですが、怒られていやな気持になったことだけは覚えているのです。赤ちゃんに対するように、相手の気持ちを想像して、相手に合わせて接していくことが一番です。」
家族の対応が変わると、認知症の方のいらだちが落ち着いて、徘徊や暴力など家族が一番困る症状が減ってくるのだそうです。
「『お金を取られた。あんたが盗んだんだろう』と騒いでいるときには、一緒に探しましょう。でも、大切なのは、本人が自分で見つけるように誘導することです。」
介護者がお金を見つけて、「ここにあったよ」といっても本人は納得できないのだとか。ですから、うまく誘導して、本人に見つけさせるようにするのを忘れないでください。
自宅にいるのに、自宅ではないと思い込み、「家に帰る」と言って落ち着かない時には、「今日はもう遅いです。夕食の支度をしましたから、ここに泊まって、あす、帰られたらどうですか?」という方が落ち着いて家に戻ってくれるのだとか。これは、映画のラストシーンで巴が政子に言っていたそのままでした。
80歳をすぎれば、40%は認知症になるということで、会場のあちこちから活発な質問があがりました。
Q:認知症になりそうかどうか、検査することはできますか?
A:健康保険では認められていませんが、自費で、ペット検査をすれば、脳に溜まっているアミロイドの量を調べることができます。でも、現在は、まだこのアミロイドの量を減らすことはできません。また、80歳過ぎたら40%は認知症になるのですから、私なら検査はしません。
Q:認知症予防には、どんなことをするのがいいのでしょう?
参加者が一番知りたい質問の答えは、
A:一般的に体にいいこと、適度な運動、頭を使うこと。脳を活性化するパズルというのもありますが、勝ち負けのあることの方が脳は活性化するようです。ゲームや、囲碁、将棋など勝ち負けのあることをするのが良いようです。
食べ物では、ウコンがいいとか、バナナがいいとか言います。バナナはカロリーが高いので1本ではなくて1/3くらいがいいでしょう。
午後に1時間ぐらいうたたねをするのもいいですよ。
いろいろな質問に時間が足りないほどでした。
講演の後、さらに、高石市見守り支援ネットワークから見守り登録のお願いと、困ったときの相談窓口として、支援センターの紹介をしました。
問い合わせ先:高石市地域包括支援センター TEL 072-265-1313
年をとっても安心して暮らしていける町であるように、地域で見守りながら支えていく枠組みを作っていきたいと思います。
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