NHKのドクターGという番組が好評のようです。
全国の臨床研修指定病院から選りすぐりの研修医が3人登場し、ある症例をめぐって、ドクターGと呼ばれる指導医とカンファンレンスをくりひろげる番組です。Gはジェネラルの略で、要は総合診療科のイメージでしょう。
これまでの医療番組にはなく、相当にリアリティがあり、実地診療にも役立つほどの高い内容になっています。
それはそれで評価できるのですが、番組の目的というか落ちのところが、診断をつけることだけに終わっているのが、実際の診療場面と決定的に異なる点です。
実地診療の場では、診断をつけることは、診療の入り口にすぎません。診断をつけてから果てしない道のりが待っているのです。例えば脳梗塞。診断はMRIで明らかになっても、それからが大変です。介護認定を受けさせ、ケアマネを決め、通所介護、訪問介護、訪問リハなどを設定し、問題行動があれば、家族に病状を説明したり、向精神薬を出したりと、大忙しになります。
ドクターGの手法は、介護保険以前の時代ならニーズに応えることができたでしょうが、今や時代遅れの感があります。診断をつけるだけでは、診療が進まないのです。
そういう意味で、超高齢化社会に向け、これからの医師像は、ドクターGではなく「ドクター爺」と思う次第であります。
(耳原高石診療所 松葉和己)
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